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アルミニウム合金板の円筒深絞り成形解析
身近なアルミ缶でも問題点が山積み
私達の身近な存在であるアルミニウム缶は円筒深絞り成形加工法によって作られています。日常的に目にするアルミニウム缶ですから、製缶は既に熟成された技術のひとつだと思われがちです。しかしながら、現在でも様々な技術的問題を抱えており、その代表的なものの一つに「耳」と呼ばれる缶の周方向に発生する凹凸が挙げられます。(Fig.1参照)
これは板材の集合組織(板材料は、製造工程の影響を受けて結晶方位が特定の方向に偏った分布を持つ)が原因であり、製造工程が異なる板材を加工した場合には耳形状も変化することが知られています。現在、製缶メーカーでは耳部分を除去した後に蓋部材を取り付けているため,歩留まりの低下による製造コストの上昇を避け,さらに省エネルギーなどの環境対策のためにも、加工の際に耳を発生しない材料が求められています。
右の動画:円筒深絞り加工のアニメーション
Fig.1 カップ外観図(4耳) Fig.2 4耳材の集合組織(111極点図)
シミュレーション技術での社会貢献
私達の研究は板材から測定された材料データ(Fig.2)を用いて、深絞り加工時に生じる実際の耳形状を再現できるコンピュータソフトの開発を目的としています。将来的には、このソフトを活用することによって、実験せずに耳形状が予測できたり、耳の発生しない材料の開発指針を提案することが可能です。これらは、工場での生産コストや環境対策において非常に効果的であり、シミュレーション技術によって環境問題に直結した社会貢献を行うことができます。
Fig.3 変形の形状(1/4領域) Fig.4 耳形状の比較
マグネシウム合金圧延板の成形性向上
マグネシウムは比重がアルミニウムの2/3,鉄の1/4であり,実用金属の中では最も軽い金属です。また,重量あたりの強度(比強度)が高く,リサイクル性にも優れていることから,環境に優しい材料として需要が高まっています.
しかし,マグネシウム合金は室温での塑性加工性が非常に悪く,生産性の良い冷間プレス加工への適用が実用化されていません.そこで,私たちは数値シミュレーションや実験を行い,成形性の優れたマグネシウム合金を作るための指標を示すことを目的としています.
材料のモデリング
数値シミュレーションを行うには,材料の変形挙動を精度よく表現できる「材料モデル」をいかに構築するかが重要となります.そのために実験や文献などで材料特性を調べ,それを数式化し,シミュレーションプログラムに組み込みます.
材料モデルができれば,パソコン上で数値実験(シミュレーション)を行うことが可能となります.
Fig.5 引張試験の様子
数値シミュレーション
材料内部の組織(集合組織)をモデル化し,どのような組織を創製すればマグネシウム合金の成形性が向上するか検討します. 下図に示すように,材料内部の組織を変更することによって成形性が向上していることが分かります.
Fig.6 材料内部組織が及ぼすひずみ分布への影響
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